第9章 飛び出せ青春 第29話~第34話 ロケ地 (中野島駅 藤野駅北 沢井 上野原保福寺 他) あらすじ

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第29話 君がやるなら俺もやる



サッカー部は金銭的に余裕がなく、ボールを買うお金もない。中尾の発案で生徒会の予備費を申請することになり、柴田・山本が生徒会室へ生徒会長の並木悦子を尋ね、相談に行く。
ところが、並木他生徒会役員は現在、理事長の銅像問題に関する生徒会報の発行に手一杯で予備費どころではない。ことの成り行きで柴田・山本はその会報の配布を手伝わされてしまった。会報によると「理事長の銅像設置のうわさがある。選挙出馬への宣伝と考えられる。問題はその費用が学園の予算から捻出されること。銅像設立の事務局長には江川が就任」ということである。
3-Dのメンバーはこの時期に銅像を設置するのは、近々開催される文化祭に間に合わせ、父兄にアピールするためと、推測する。彼らはどうせたてるなら校長の銅像にすればいいと考えている。
 早速、江川の腰ぎんちゃく、塚本がその会報を回収に来た。
 そして、翌日、掲示板に生徒会長以下の処分内容が掲示された。生徒会長の並木(2週間)と副会長の三浦昭、橋本健治の停学のみならず、会報を配布した柴田・山本も停学となる。河野は江川に講義するが聞き入れられない。
 さて、生徒側もだまってはいない。各クラスの代表と各部の代表が集まって臨時執行委員会を開く。3-Dからは柴田・山本が皆に推されて、参加する。その会議では間近にせまった文化祭の準備を誰がひっぱっていくかが焦点となるが、全員の相違で、なんと柴田・山本が2週間の会長代行に選ばれた。彼らは2週間の間、寮に泊まることになった。
 一方、江川は生徒側に不穏な動きのあることを察知し、理事長に報告するが元倉理事長は銅像設置の強行を指示する。
 そして、いよいよ除幕式。塚本が銅像をくるんでいた布をとると、銅像にはなんと落書きされており、元倉理事長は公衆の面前で大恥をかく。激怒した理事長は、江川に犯人探しを命令する。江川は3-Dの連中の仕業に違いないと、教室に入り、「自首」するよう説諭するが誰も手を挙げない。
 夜、銅像はこんどは3-Dの連中によりこっそり、周囲に杭を打たれ、フェンスで囲まれた上で、「むやみにエサを与えないで」という札まで立てられた。しかし、今回は理事長の目に触れられるまでに、江川と塚本が汗まみれになりながら、元に戻し、なんとかことなき得た。
 そして、江川の命により、塚本が徹夜で警戒することになった。その夜、塚本はあやしい物音を耳にし、校内中を走り回って犯人探しをするが、結局見つからず性根尽き果てて円形校舎北側の階段で眠ってしまう。翌朝、生徒たちに起こされた塚本は銅像がなくなっていることに気づき、驚いて周囲を操作する。そして、なにやら多くの生徒が集まっているところにいき、それをかきわけると・・・。なんと銅像にはブラジャーがかけられ、ペテン師の像という札がかけられていたのだ。そして、理事長もそれを目の当たりにした。さすがに河野もいたずらの行き過ぎに怒る。しかも、柴田・山本はこのイタズラに加わらず、夜遅くまで文化祭の準備に必死に取り組んでいるのだ。
 その文化祭の準備は着々とすすんでいたが、江川は「明日までに犯人がわからないときは、あさってからの文化祭は中止とする」という決定を下し、生徒たちは大混乱にいたる。
柴田・山本は犯人が3-Dのメンバーであることを知ってはいるが、友達を売るわけには行かない。そこで、柴田・山本は犯人が自分達だということにし、退学届けを出すかわりに文化祭を予定通り開催してもらおうと、決意する。このとき二人で「君がやるなら」「男一匹だもんな」と決意を確認しあう。そして翌日退学届けを手に、江川に「自首」する。
 それに気づいた3-Dの連中は、二人を退学にさせまいと江川に直談判に出向くが途中で元倉に止められる。元倉によると河野が理事長のところに行っているという。そこで高木だけが江川のところに行き、片桐他は理事長の家に向かう。
 理事長宅では河野が理事長に処分解除などを願い出るが、大勢の前でプライドを傷つけられた元倉は感嘆には引き下がらない。そこへ元倉明子(酒井)がはいってきた。そして、理事長の学生時代のアルバムを見せる。たたみかけるように河野が「あなたもイタズラの経験があるはず。わかってください」と最後の説得をする。
 理事長もここにきて、ようやく納得、電話で江川に「犯人探し中止。処分全員解除。文化祭の予定通りの開催。銅像をものおきにでもたたきこんでおく」ことを指示する。
 晴れて、文化祭が始まる。生徒たちは思い思いのコスチュームで仮装行列で校門を出て行った。第29話はここで終了。
 今回もやはり、元倉理事長の懐の広さが実感できる。本エピソードの最大の見せ場、感動ポイントは理事長の江川への銅像廃棄他の指示のシーンだ。

※ロケ地情報

① 国士舘鶴川・・・
冒頭のサッカー部の練習シーン
② 日大明誠・・・
校門前の掲示板(処分の発表)円形校舎西側(銅像の除幕式)
        円形校舎北側階段(塚本が寝てしまった場所)西校舎南東隅(文化祭の準備)円形校玄関前(仮装行列の出発点)


※マニアック情報

① 今週の委員・・・
1) 友枝○○、松本○、田中 陽子
2) 前原良子、中山堅次、大島  中山竜二は病欠
② 仮装行列
河野(水戸黄門),柴田・山本(助さん角さん)高木・生田(坊ちゃんとマドンナ)
森下(尼)片桐(三度笠の渡世人)谷岡(黒い帽子・・・)中村(インディアン)
中尾(月光仮面)橋田(鬼太郎)小西(   )桜井(   )畑野(浦島太郎)
大島(神輿担ぎ)木次(女性)



第30話 あなたがいなくなると私はやはりさびしい



飛び出せ青春随一のギャグ・エピソード(筆者の独断)。
東山スポーツ振興会主催の秋季庭球大会が開催されている。森下は東校のチームとダブルスの試合に参加している。3-Dのメンバーも数多く応援に来ている。(主審はナカダ)
 結局、森下チームが勝つが、試合終了後、森下は対戦相手の東校のテニス部キャプテン中田にデート(2人きりでのテニス)に誘われる。
 そして、テニス・デート当日の日曜、森下はうきうきして出かける。それを寮の玄関で居合わせた片桐が目撃、大島・野口の話からどうも河野とのデートだと勘違いする。
そして、片桐は同じく寮から外出した河野にしつようにつきまとい、何処へなにをしに行こうとしているのかをしつこく追求する。河野は「こういうことはおおっぴらにするものではない」「俺だって行かなければならないときは行くんだ」などと、応酬する。ますます不信がつのる、片桐だが結局、河野は質屋に入質に出向いただけであった(ここが本エピソードの第一の爆笑ポイント)  しかし、安心したのもつかの間。片桐は森下が県立のキャプテンと楽しそうにテニスをしているシーンを目撃してしまう。片桐は森下が河野にこがれるのはまだ我慢ができるが他校の人間とつきあうのは、おもしろくない。そこで木次・柴田・山本の4人でなんとか森下の気を河野に戻すための作戦を考える。練習をさぼっているのを見咎めた畑野にはベトナム問題を論じているなどといい加減なことを言う。
 そして木次が考案した作戦を実行することになる。それはこういうものだ。
まず、紙にI shall miss you badlyという文章を書き、それを河野に和訳してもらい(私はあなたがいなくなるとやはり寂しい)、それを英文の下に書いてもらい、さらに河野の署名を記入してもらうというものだった。河野はなにかたくらんでいるんではないかといぶかるが柴田が「うちのとなりの県立のやつがその訳ではないというもんですから」というとっさのウソいい、なんとか、河野に書かせた。そして、英語の部分を切り取り河野の自筆による和訳と署名の部分のみを残す。これをなんらかの手段でこっそりと森下に見せれば作戦は成功である。
 早速、柴田・山本はこっそりと女子テニス部の部室に侵入、森下の制服のポケットの中にそのラブレターを挿入する。あとは森下がそれを見ればいいだけだ。
 しかし、その直後、森下は養護教諭の金子陽子とぶつかってしまい、双方の持ち物が散乱してしまう。そのどさくさに紛れ、河野自筆の偽ラブレターがなんと金子の本の間に挟まってしまう。森下も金子も気がつかないし、まして、柴田・山本たちは偽ラブレターが金子の手に間違って渡ってしまったことなど知る由もない。
 金子はそのまま帰宅する。金子の家は葬儀屋。こんど、医者と結婚することになっている。そして金子は自室で本の中から河野自筆のラブレターを見つけ、驚いてしまう。 そして「あなたがいなくなると私はやはり寂しい」という言葉を間に受けてしまった。
 次の日曜日、金子は寮の河野の自室を突然訪れ、河野の下着の洗濯などをする。河野は「もうすぐ結婚するんでしょう」などと、いぶかる。
一方森下は県立のキャプテンと仲たがいし、寮に帰り、金子が河野の下着を洗濯しているのを目撃してしまう。女子生徒たちは河野を追及する。
 そして、3-Dの教室で河野が授業中、こんどは突然、金子陽子の両親が乱入する。そして、「娘が縁談をことわると言い出したのはあんたのせいだ」と河野を追い回す。河野はなんのことかさっぱりわからない。そして、ついに金子の父親により投げ飛ばされてしまったのであった。(ここが本エピソードの第二の爆笑ポイント)
 柴田・山本はここにきて、あの手紙が間違って、金子の手にわたってしまったことに気づいた。そして木次・片桐も交えて急ぎ、善後策を練った。金子を呼んで、あのラブレターはまちがいなので返して欲しいと懇願するが金子は頑として拒否する。
そこで、こんどは河野に「僕は君を友達としてしか思っていません。早く幸せな結婚をしてください。河野武」という手紙を河野に書いてもらった。それを金子に渡せば事態は解決すると考えたのだ。河野も同意した。そこで、木次・片桐は医務室にはいり、掛けてあった服の中にその手紙を入れた。これで一安心だ!しかし、その服は金子のものではなく実は頭痛で寝ていた元倉先生の服だった。木次たちが気づいたがすでに手遅れだった(ここが本エピソードの第三の爆笑ポイント)
医務室から出た元倉は河野自筆の手紙に気づく。そして、河野を連れ出し、「私が結婚しようがしまいがあなたには関係はない」と言う。河野はまたしてもなんのことかさっぱりわからない。
しかし、最終的に、木次たちの仕業だとわかり、彼らを捕まえ、罰としての特訓を課す・・・
それを見ている女子生徒たち。いったいなにがあったのかわからない。そこで畑野がぽつりと一言「ベトナムが絡んでいるらしいのよ」・・・(爆笑!)
第30話はここで終了。
しかし、脚本を書かれた方も、よく、こういった面白いストーリーを着想できるものだとあらためて感心する。

※ロケ地情報

① 東山スポーツ振興会主催の秋季庭球大会会場・・・
特定できていない。
② 日大明誠・・・
グラウンド(サッカーの練習中ケガをした河野を救急車こと養護教諭の金子がかけつけるシーン)
円形校舎前~正門(出かける河野に片桐がつきまとうシーン)
駐輪場裏(片桐・木次・柴田・山本が森下の気を河野に戻すための作戦を練るシーン)
体育館西側(森下と金子がぶつかってしまうシーン)
体育館~円形校舎までの坂道(柴田・山本が森下の制服の中に河野自筆の偽ラブレターを入れたあと作戦成功とばかり嬉々として駆け下りていくシーン)


※マニアック情報

① 畑野がショートヘアから元の長さに戻っている。
② 今週の委員・・・広田京子・中山和也・大原良一(病欠・・・松田)



第31話 ともに歩こう明日に向かって



太陽学園に東大進学率日本一といわれた秀才高、西海学園高校から高見という学生が転校してきた。(河野の知り合いの先生が西海学園高校にいたという縁で) そして、3-Dに編入される。しかし、態度が大きい。
 高見は寮の215号室に入るが、彼の姉(鮎川いずみ)も、しばらくのあいだ近所のアパートに滞在することになる。その姉の様子もまたなにか事情があるかのような様子だ。
高見は寮の食事についても、お米のご飯は脳の働きを悪くする・・・などという発言をして、寮母のウメさんや他の寮生達の反感を買う。
 一方、河野は森下にひそかに「高見の友達になってやって欲しい」と懇願する。森下は断るが、河野ただならぬ様子に驚いていた。  高見の不遜な態度は続く。元倉の国語の授業中に他の科目の内職をし、その理由として国立1期(古い!)に入るためには仕方がないなどという。
 サッカー部員はそんな高見をサッカー部に入れて、揉んでやろうとするが、そのとき、先般河野に「友達になってくれるよう」懇願された森下により「救出」される。
そして森下は高見をつれて河原に行き、幾何(古い!)の質問をし、友人になっていく。
3-Dの連中は秀才高見に一泡吹かせようと、クラス随一の秀才、中尾洋一に相談し、次のような作戦をとる。
 まず河野に願い出て、1週間後に英語のテストを設定してもらった。そして、東大生をひそかに寮の一室に予備、中尾を缶詰にして、家庭教師をする(料金は15000円) その間、外には一切出てはいけない。トイレは深夜だけ。
 また、寮の食堂では、寮生たちが中尾たちのためにおにぎりをウメさんの目を盗んで流れ作業でつくった。さらに高見を将棋にさそったりして、勉強をさせないようにした。
 川のそばのボート小屋で高見が森下を待っているが彼女はまだこない。そのとき風船を買ったばかりの小さな男の子がころんでしまい風船が飛んでいってしまった。高見はその男の子に手をさしのべ、代わりの風船を買ってあげた。そのシーンをたまたまみていた森下は高見は実はいい人ではないかと思うにいたった。そして、いつものように高見に勉強を教えてもらうのだった。
 さて、いよいよ英語のテスト当日。中尾は極度の眠気のため、テストをまともにうけられなかった。結果はさんざん。1位が高見、2位が森下(下記マニアック情報参照)。
そして中尾を馬鹿にしたような高見の発言にクラスの皆の怒りも最高潮に達する。
 そのころ河野は高見の姉のマンション(伸光マンション)から出てきたところを畑野・桜井に目撃される。
 そして3-Dのメンバーは高見に急接近中の森下を追及、森下は河野に「友達になるよう頼まれた」と告白する。その晩、寮の食堂でついに寮生は爆発する。
 片桐たちは河野に対し、「高見の姉に惚れて、高見に甘い」「森下はあんたに頼まれて高見に接近したと白状した」と追及する。これを聞き、高見は森下を信用していたばかりに大ショックを受け、食堂を飛び出してしまう。森下も困惑しているようだ。
河野は寮生の怒りの追及を受けているときに、高見の姉がはいってきた。そして、皆に事情を説明する。実は高見は6ヶ月前に多発性骨髄腫という診断を下された。余命はあと1年半から2年。姉は、残り少ない青春を楽しく過ごさせようと、河野に相談し、太陽学園に転校させた。彼は自分の病気のことを知らない・・・というものだった。3-Dの連中はこれを聞き、言葉が出ない。
 そして、皆で高見の部屋に行くと、そこには病気に関する専門書が何冊かあった。高見は自分の病気をしっていたのだ。
 姉(鮎川)ももはやどうしていいかわからなくなってしまった。そんな姉に高見は「姉さんと同じだけの命をくれ」という無理を言う。
 次の日、高見は授業を受けずに、町へ出て行き果物屋の果物を金も払わずに勝手に食べていざこざを起こすが、後をおいかけてきた森下が立替、ことなきを得る。
 そのころウメさんは、高見の姉の書いた遺書を発見、河野に急報する。驚いた河野は3-Dのメンバーとともに姉のマンションへ行き、管理人に鍵を開けてもらう。果たして部屋の中には手首を切って自殺をはかった姉がベッドに横たわっていた。脈はまだある。「救急車!」と河野が叫んだ。
 森下はそのころ高見に「最初はいやいやながらあなたに接近した。でも今は違う。今はあなたのことも好き。嫁になってもいい」とまで言う。そのとき、___が姉の異変を知らせにきて、高見は病院にかけつける。
 高みの姉は柴田・片桐の輸血で助かった。しかし、「自分への面当て」と主張する高見に河野の怒りも頂点に達し、「お前を甘やかしていたのは間違いだった」と思いっきり高見を殴った。そして、姉の遺書を見た。そこには「あなたは姉さんと同じくらいの命をくれと言った。だから、あなたの命の長さに合わせる」と書いていた。河野は高見に 「太陽になれ。太陽のように燃えて、熱く生きるんだ」と励ます。
私が感動したのはやはり、冷たそうな高見が子供に風船を買ってあげたシーンである。 どんないやそうな人でも必ずや一つはいいところはあるはずだ。
 またこのエピソードは難しいテーマ、すなわち、死ぬことがわかっている人間への対応、を取り扱っている。現代でも非常に重要でかつ難しい問題である。  冒頭、柴田が高見と姉を見て「はい。みなさん。ちょっと、あちらを見ていただきましょうね。はい。はい。見えましたね。まあ、なんて美しいんでしょうねえ。まあ。なんて、キレイなんでしょう。すばらしいですね。はきだめに鶴ですねえ。」「はい。もう時間来ましたねえ。もう、うるさいうるさいマネージャーがきましたねえ。ま。こわいですねえ。もう、おそろしいですねえ。ほな、また、おあいしましょうね。サヨナラ、サヨナラ」 というシーンがある。映画評論家、淀川長治さんのマネである。

※ロケ地情報

① 日大明誠・・・
グラウンド(冒頭のサッカー部の練習、高見をサッカー部に強制的に入部させようとするシーン、ラストで高見がサッカーをするシーン)
正門付近(高見が姉とともに学園に入ってくるシーン)
体育館入り口(高見に対抗するために3-Dのメンバーが中尾に相談するシーン)
② 河原(五本松?)・・・
森下が高見に幾何の質問をするシーン
③ ボート屋・・・小田急和泉多摩川駅南のガードすぐ南東
④ 二の橋商店街 ・・・件のブログによると、マキが高見を追いかけるシーン。「小六」というお店。第19章ご参照。

※マニアック情報

① 今週の委員・・・沢田哲○、片桐治朗、松岡孝雄(病欠・・・松田和子)
② テスト結果(3位以下)
3位から順に生田みどり、吉岡洋一、今泉文子、橋本一、松岡・・・・



第32話 友達だもの信じるよ



太陽学園のサッカー部の練習をなんとなく怪しげな2人組の男が見つめている。そのとき、柴田が近づいてきた。なぜかいきなり逃げ出す2人組。柴田は彼らを追いかける。それに気づいた河野は寮の前で2人組を制止する。しかし、実は2人のうちのひとり松本修一(しゅうちゃん)は柴田の中学のときのクラスメートであり、柴田はそれに気づいて追いかけてきただけのことであった。柴田は小さいころ体が弱く、しゅうちゃんがかばってくれたという。
 しゅうちゃんとその連れ、田代(赤塚真人)は柴田の自宅へ誘われる。聞けば2人は今は秀才高、開(?)城高校に在籍しており、試験休みのために、戻ってきているという。
 一方、寮の宿直室。ウメさんの話では最近学校荒らしが出没、隣の南海高校も被害をうけたということだ。
 しゅうちゃんは柴田に明日の幾何のテストのヤマを教える。果たして、そのヤマは的中、柴田は高得点を取り、数学の桑田教諭にAクラス入りも夢ではないとほめられる。
 柴田の母にも感激され、2人はしばらく滞在することになる。しかし、2人は実は開城高校の生徒ではない。松本が口から出任せを言ったのだ。実は松本は中学卒 であり、夜逃げ同然でこの町を逃げ出したのであった。田代は松本に「お前は自分よりできの悪いやつら進学できることへの憎しみの感情がある」と語る。
 山本の母は柴田の母から散々自慢話を聞いたからおもしろくない。強引に田代を自宅へ連れ込み、山本の家庭教師をさせる。しかし、松本と違って田代は勉強は全くダメ。家庭教師どころではなく、山本も呆れる。
 桑田・江川からAクラス入りを進められた柴田は松本に相談する。松本は「学校なんて楽しみに行くところではない。行きたくとも行けない人も大勢いる。」と賛成、
 柴田はサッカー部を退部して勉強に専念することを決心する。河野もそれ引き止めなかった。
 田代は松本に「俺たちは学校荒らしだ。長居は無用」と早く“仕事”をして、この町を出ようと進言する。一旦は退部を決意した柴田だがやはりサッカーのことを忘れられない。そこでやはりAクラスにはいかないことにする。
 松本は、今晩、太陽学園に侵入することを決めた。
 山本は松本・田代に不審をいだいている。東京へ帰ったと柴田から聞いたが、さきほど町でみかけたという。しかも終電も出た後だ。試験休みというが受験雑誌によると今は試験中との記載がある・・・。柴田も不安になり、夜の町に松本を探しに出た。
 松本たちはガラス窓を割って太陽学園へ侵入し職員室で物色し始めた。それを見て柴田は愕然とする。松本・田代は逃げてしまい、柴田だけが職員室に残った。
 そして、江川や塚本は柴田が盗みにはいったものと断定した。山本は柴田が2人組をかばっているのだと言い張るが柴田は「自分が犯人だ」と主張する。
 翌日、河野は2人を駅で探しあて「柴田は自分が犯人だと言っている」とだけ告げて、その場を去る。そして次の日、松本・田代は太陽学園に出向き、江川たちや生徒にすべてを告白する。柴田は松本たちが必ず戻ってくると信じていた。ドラマとはいえ、ここまで友達を信じることができるというのはすばらしいことだと思う。  

※ロケ地情報

① 日大明誠・・・
グラウンド(冒頭の練習シーン)
寮と校舎の間の坂道(逃げ出した2人組を河野がとめる場所)
② 国士舘鶴川
③ 砂利取り場・・・
柴田と田代がカンでサッカーをするシーン。おそらく上野原だと思うが特定はできていない。

⑤ JR中野島駅・・・
河野が松本・田代をみつけるシーン

中野島駅の位置 中野島駅
中野島駅の位置 中野島駅(2004年撮影)


中野島駅 中野島駅
中野島駅 中野島駅


中野島駅 中野島駅
中野島駅 中野島駅



第33話 35点は落第点



ある日、2年C組の田村登が突然、サッカー部の部室を訪れ、「今日だけでいいから」と入部を志願する。部員たちはいったんは断るが、田村のあまりにもの熱意に入部を承諾する。
 さて、江川教頭は理事長から劣等生対策を講じるよう指示を受けた。なにせ、太陽学園は杉田校長の考えで「無試験で入学。しかし、完全に単位をとるまで留年」というシステムだ。したがって、できの悪い生徒への退学勧告をせねば、劣等性がどんどん残っていくというのだ。
 田村登の父(加藤・・・金田一シリーズの刑事役で著名)はガンコな百姓だが、太陽学園に来校し、息子の登の退学届けを江川に提出する。百姓に学問は要らないというのがその理由だ。江川は小躍りして喜ぶ。一人でも、劣等生が減るからだ。河野は登の父に再考を促すが、父親は全く聞き入れない。河野は元倉の案内で郷土史研究班の部屋に入る。そこには田村のまとめた「東山郊外における縄文式文化について」というレポートがおいてあった。元倉によると、田村が東山市南西3キロでなんの変哲もない土器のカケラをみつけたことが、後に東山古墳の発見につながり、東京の大学からも発掘に来て、新聞にも掲載された・・・ということだ。河野は田村に学校をやめさせたくないと思うにいたる。
そして、田村の自宅(農家)を訪ねる。登の父、源作に息子を学校に戻すように、説得するが、父は「自分は村一番頭がよいといわれていたが貧乏で小学校しか出ていない。息子は恵まれているのに勉強をしない」と主張、河野を追い返す。
 河野は江川に田村からの退学届けを保留するよう、願い出る。
 江川は塚本の発案で、「成績表を撤廃し、全員を留年させることなく卒業させる」という案を河野から杉田へ進言するよう、河野に要請するが、河野は断る。生徒たちは成績表がなくなるので大賛成だが、河野は「成績表とは、どの才能を伸ばしたらいいかという生徒と先生の連絡表にすぎない」とその理由を説明する。
 その後、河野は再度、田村の家に出向く。そして、田村の母から「お父さんは杉の木を育て、登の大学進学の費用に充てようとしていた。そして、自分ができなかった勉強を登のして欲しかった。お父さんは登がやる気を出すのを待っている」と告げる。  河野はそれを聞き、河原で田村に、「お父さんは考古学に振り回され、他の教科をしないことをふがいなく思っているのだ」と告げ、田村は意を決して父に「2学期のテストで全科目及第点をとったら学校へ戻ってもよい」という約束をとりつけた。  さあ、あとは田村次第だ。3-Dの生徒たちも必死で田村を応援する。秀才中尾は試験の出題傾向を教え、柴田・山本は懸垂の特訓を課す。音楽の得意な桜井は和音の聞き取りの特訓をする。
 そして、それらの甲斐あって、田村は各科目で及第点を取っていく。国語は62点、歴史は98点・・・しかし、河野の担当する英語だけは35点という落第点であった。これで、田村は父との約束を果たせず、退学が決定してしまう、3-Dの生徒たちは河野になぜ点を甘くしないのかと詰め寄るが、河野は聞き入れない。
 田村は、父に全科目のテスト答案を父に見せる。父は英語の答案を見て、「35点が落第点だとあのやろう(河野)は知っていたのか?知っていて・・・」
「やりやがった!やりやがったよあいつ!登。父ちゃんはこういうがんこさが大好きなんだ。お前もやればできるじゃあないか。上出来だよ。これだけできれば上出来だよ!」
と登の退学を撤回する。田村は嬉々として走っていった・・・・。
   もっとも感動したのは、田村の父が「上出来だよ。これだけできれば上出来だよ!」 と大喜びするシーンだ。
私は杉田校長の「無試験で入学。しかし、完全に単位をとるまで留年」というアメリカ的なシステムには大いに賛同する。受験勉強というものがなくなったり、 元パソコン講師の私としては先生も生徒が選べる・・という部分があってもいのではないか。ついでに、公立学校の先生の毎年の雇用契約結び直し。学区制を撤廃し、小学校でも行きたい学校の学びたい先生の授業を単位ごとに受ける・・・。集団生活・団体行動の教育の問題もあろうが、それは「トライヤル(中学生への職業体験教育)」やキャンプ、ボランティアなどで対応できるのではないか。つまり、民間 であたりまえの、契約の概念をさらに広く教育の現場に投入するのである。やる気や能力のないのに手厚く保護されている「にせ教師」はこれで淘汰されるはずだ。まず、そこからだと思う。もっとも、山積する諸問題を解決するには、保護者も変わらねばならぬし、地域もかわらねばならないが。

※ロケ地情報

① 日大明誠・・・
円形校舎裏(田村がサッカー部の部室に向かうシーン)
体育館南側(3-Dの生徒たちが集うシーン)
② 国士舘鶴川・・・
サッカー部の練習
③ 田村の家付近・・
特定できていない。件のブログによると藤野駅北の沢井川。第20章ご参照。 ④   保福寺・・・日大明誠高校西側。第20章ご参照。



第34話 くたばれコンプレックス



サッカーの冬季リーグの対戦相手が県立東高に決まり、サッカー部員も練習に気合が入る。
一方、寮では女子生徒の下着が盗まれる事件がおきていた。森下たちはサッカー部員の寮生の仕業と疑うが、片桐たちは当然否定する。
 河野は授業中、黒板消しのないことに気づき、当番の武井という小柄な男子生徒に「後で探しておくよう」指示し、仕方がなく、自分のハンカチで消そうとするが、河野がポケットから取り出したのが、件の女子寮生のパンツだったからたまらない。教室内は騒然となるが、河野も全く身に覚えがない。さらに「事件」は続く。職員室の河野の机の引き出しの中に、女性用のスリップがあるのを畑野が見つけ、河野にとって状況はますます不利になる。もちろん、河野自身も驚いている。サッカー部員が下着ドロボーと疑われた河野に対し、サッカー部員が「ビギンがそんなことをするはずはない」と励ます。
 そして、寮では片桐・木次たちが下着泥棒を捕まえるわなをしかける。もし、誰かが侵入したら網が落ちてきて、しかも、片桐の部屋の中の警報が鳴る仕組みだ。
 そして夜の23:00、突然警報が鳴り、片桐たちが駆けつけると、そこには網にかかった河野がいた。寮生は河野を追及するが、河野は犯行を否定、「自分でも犯人探しをしようとしていた」と弁明する。
 このうわさを聞きつけた江川・塚本は河野を詰問し、辞表の提出を要求するが、元倉先生が中に入り、その場は収まる。  教室では高木を中心に、河野を落としいれようとする犯人をさがすということでクラスの意見が一致、養護教諭の瀬川(金子陽子ではなかったか・・・いつのまにか名前が変わっている・・・)もビタミン剤と指針安定剤を河野に進呈する。  そして、元倉は河野の部屋の押入れの中に待機する。しばらくして、こっそりと河野の部屋入り、盗んだ下着を置こうとした生徒を見つける。武井だった。
 裏山で元倉が河野に事情を説明する。武井は河野やサッカー部員が憎かったのだ。まるで友達のようにつきあっている河野と生徒を・・・。また、自分の体が小さいことにコンプレックスを持っていた・・・
 さて、犯人が武井だとわかってもそれを生徒に伝えることはできない。河野と元倉、瀬川が一計を案じ、下着ドロボーを寮の隣の犬、ジローでるとし、3-Dの生徒に説明した。風でとばされた下着をジローが集め、それを瀬川がいつも女子生徒にデレデレしている河野にやきもちを焼き、こっそり、河野のポケットや引き出しにしのばせた・・というストーリーだ。3-Dのメンバーは納得する。
 河野は一連の対応につき元倉に例を言う。元倉は「武井君がこういう行動をしたのはコンプレックスから一歩踏み出したということ。あとは河野先生の力次第。河野先生が憎いということは裏返せばそれだけ先生を頼りにしているということ」と河野に返す。  河野は武井をサッカー部に入部させる。しかし、冬季リーグを控え、気合のはいっているサッカー部員は納得がいかない。実際、練習でも武井は足手まといになるだけであった。
部員の反感を察知した武井は堰で河野に退部を申し出るが、河野は「今、ここであきらめたら一生いろいろなことであきらめるようになる」と翻意を促した。
 武井は足手まといになりながらも必死で練習についていく。そんな武井を見て、河野はレギュラーメンバーにすることを決めるが、部員の猛反発を受ける。武井はまたしてもその空気を察知して「メンバーからはずして欲しい」と河野に願い出るが河野は「自分を自分であわれる暇があったらどうやったらゴールを決められるかを考えろ」と諭す。
 そして県立東との試合の日が来た。試合は、一方的に東校のペースで進んでいく。武井はあいかわらず足手まといである。高木は武井を変えろと河野に要求するが河野は「「オンボロチームのままで県立東校に勝つのが俺の夢だ。しかし、サッカー部はおまえたちのものだからいつでも去る」と返す。
 これに発奮したのか、部員たちはなんとかして、武井にゴールをさせてやろうと必死になる。そして、武井はつににゴールを決めた!試合は1-11でボロ負けだったが、部員たちの表情はまるで勝ったかのように嬉々としていた。県立東の部長、木下はそれを見て、感動したのであった。「お前たち(東校のメンバー)のようにただ勝つために試合をしているのではない。俺はうらやましいよ。あの河野という先生が」
 しかし、試合に負けてしまったのは厳然たる事実。河野は部室で、高木に「責任は取る」と告げるが高木は「あんたは一人の人間を助けた」と慰留する。
 ラストシーン。 武井は下着ドロボーであったことを部員に告白する。皆、もはや気にしていないのだが、武井はそれでは気がすまないと、皆に頬をなぐってもらうよう要求した。      

※ロケ地情報

① 国士舘鶴川・・・
サッカー部の練習シーン。下着ドロボーと疑われた河野に対し、サッカー部員が「ビギンがそんなことをするはずはない」と励ますシーン。
武井が一人で居残り練習をしているシーン。県立東高との試合。
ラスト、武井がすべてを告白し、そのあと河野たちがジローに追いかけられるシーン。
② 日大明誠・・・
裏山(元倉が下着ドロボーの武井を河野に引き合わすシーン。うさぎ跳びのトレーニングのシーン)
  西校舎南端(河野が瀬川にお礼のキスをするシーン)
③堰(?)・・・
武井が河野に退部を申しいれ、河野の説得で翻意するシーン。


※マニアック情報

①警報装置に使用された電池はナショナル(松下電器)のハイトップシリーズと思われる。


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